「もしも、うさぎくんが死ぬコトになっても、僕はきっと悲しまないよ」
くまくんはそう言ってコーヒーを飲みました。
口の中で広がる苦味はコーヒーのせいなのか、吐いたセリフのせいなのか・・・
今のくまくんには到底分かり得ないことでした。
「それでもいい。僕は悲しみを求めていない」
そう言ったのはうさぎくんの方でした。
うさぎくんはただ、この世界とお別れしたいだけなのです。
「君はワガママだ。そして愚か者だ。生きるということを分かっていない。」
静かに重くそう言ったまま、くまくんは口を閉ざしてしまいました。
うさぎくんは呆れたような困ったような顔をして
「生きるということが分かる者がいるとしたら、それは神に違いない」
そう言うと、彼もまた口を閉ざしてしまいました。
どれくらいの時間が流れたでしょうか。
長いようで短いようにも思える沈黙でした。
それを壊したのは、他でもない
石焼き芋でした。
「石焼〜き芋〜〜!焼き芋!美味しい美味しい焼き芋〜〜」
聞こえてくる焼き芋車の声。
「芋か・・・」
おそらくは同時に、あるいはどちらかがつられて、二人はそう呟いていました。
そして思わず顔を見合わせ、照れ笑いが生まれました。
それはまるで石焼き芋の魔法のようでした。
何か諦めたように、うさぎくんは言いました。
「今日は芋が食べたい。死ぬことを考えるのはまた明日にするさ。
どうやら迷惑をかけたようだし、君の分も買ってこよう」
それを聞いたくまくんは
「コーヒーと芋が合えばいいけれど」
そう言っておどけて見せるのでした。
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